Everyday Birthday: 12月 2011

2011年12月20日火曜日

ルリユールおじさん

いせひでこさんの絵本に、『ルリユールおじさん』というのがあります。
ルリユールとは、ヨーロッパの伝統工芸で、製本をおこなう技術。

絵本の中では、少女が大事にしていた植物図鑑が
こわれてしまって、町でであったおじさんが、
もう一度本に仕立ててゆく様子が描かれています。

ぼくの好きな絵本のひとつです。

近頃は、電子書籍の話題にとても感心があります。
まだまだ弊害が多くて普及には至っていませんが、
CDを買う時代から、ダウンロードに変わったように、
この流れは止められない気がします。

図書館では、すでに過去の本の電子化が進んでいます。
そうすれば、大量の蔵書も必要なくなりますし、痛みませんから。

では、紙の本は無くなってしまうのでしょうか。

ぼくは逆に、紙の本は今よりもっと貴重な物になると思っています。
部数も減って単価が高くなるので、読む以外の付加価値が求められる。

読者としては、内容が読めればそれで良い。
作家としても、作品を読んでもらえればそれで良い。

けれど本という形で残るのは、また違った歓びがあるものです。
もしかしたら、ルリユールという技術も、見直されるのかも知れませんね。

2011年12月16日金曜日

一本松の教え

咲き誇る花を見れば、土の下の根を思え
凍てついた冬を生きた、土の下の根を思え

缶コーヒーのCMで歌われていた
コーラスジャパンの『根の歌』の一節です。

震災直後の津波にのまれて、一本だけ残った
「奇跡の一本松」。
とうとうこの木も、根が腐って枯れてしまい
回復の見込みはなくなりました。

けれども、この木の残した松ぼっくりや、
枝からの接ぎ木で、苗が育ったそうです。

この松の樹齢は270年といいますから、
苗が育つにも同じ時間が必要になります。

木はなにも語りません。
ただ、だまってそこに立っている。

この松が残した希望とともに、
哀しみが癒え、歓びが芽生えてほしいと願います。