Everyday Birthday

2015年2月24日火曜日

じんましん騒動

先日レストランで豚づくしのディナーを食べていた時のこと。
どうにも体がむずがゆい。

パッと腕を見ると、蚊に刺された跡のような水ぶくれが一面にある。
わぁ、じんましんだ。

豚のアレルギーはないはずだし、いったい何が悪かったのか。
その後しばらくすると引いていったので、ほうっておいた。

ところが翌日になって、風呂につかるなりみるみる体がかゆくなり、
再びじんましんが現れた。
心配になったので、一度病院で見てもらうことにした。

病院に行き、これこれしかじかと病状を告げる。

「まあ、アレルギーと言っても色々あるし、豚だけ食べた訳じゃないでしょう」
「そうですね」

「あなた花粉症ではない?」
「はあ、朝ちょっとくしゃみが続きましたが、違うと思います」

「私は花粉症でねぇ、今日も朝からツラくてしょうがない」
「それは大変ですね」
テーブルにも、のど飴の袋が開けてある。

「大学の時からだから、スキージャンプの葛西がオリンピック出る前からですよ」
「ほお、それじゃあ花粉症のレジェンドですね(笑)」

言ってる場合かっ!

あなた医者なんだから、もっと早くに対策すればいいじゃないの。。。

「それじゃあ、抗ヒスタミン剤出しておきますよ。
アレグラってえの。眠くなりにくいから」
「アレグラですか?」
「そう、CMでやってるやつ」

へぇ、ほんとに眠くなりにくいんだぁ。


あれ?

それって、結局花粉症の薬じゃないの??

「あのぉ、気になるんで、アレルギーテストもしてもらっていいですか?」
そうお願いをして、採血をとって後日結果を待つ事に。

その足で薬局に薬をもらいに行くと、薬剤師さんが言った。

「花粉症ですか?」

2015年2月18日水曜日

料理の哲人


ひいきにしているレストランが、とても面白い企画をやると聞き、
さっそく予約を入れた。

昔のテレビ番組『料理の鉄人』さながらに、イタリアン、中華、フレンチのシェフが、
ひとつの食材をテーマにコース料理を組み立てるという。

そして今回の食材は、長野のブランド豚『千代幻豚』

週に30頭程度しか出荷されないという、生産者こだわりの貴重な豚だ。
シェフ達がこの豚に惚れ込んで意気投合し、この企画が生まれたらしい。
それを耳の先から足の先まで使い、前菜からメインまで豚づくし!

もはや、食べる前から「おいしゅうございます」といってしまいそうになる。

前菜は伊、仏、中の3種。
フレンチのシェフは、耳と顔のお肉をケークサレにし、ハムを添える。
イタリアンのシェフは、肩肉を肉厚のサラミに。

中華のシェフはバラ肉をシンプルに蒸し、スパイシーなソースをかけ、
スライスしたキュウリと大根を包みこむ。
さらっとした豚の脂と甘みで、肉質が良くポテンシャルの高さをうかがわせる。

そんな具合に中華スープ、イタリアンのパスタ、フレンチのメインと料理が続く。

一番驚いたのが、豚足を使ったパスタ。
パスタといっても平打ちのショートパスタで、肉のミンチの方が多いくらい。

正直、豚足は苦手なのだが、恐る恐る口に運んでみる。
すると、豚の野性的な香りがスパイスと香草のしげる草原を、
だだだっと駆け巡っていった。
ひと匙ごとにクセになる味。なんでも調理の仕方次第なのだ。

メインは豚の肩ロースで鶏を包んで煮込み、酸味を利かせたソースをまとわせる。
下には紫芋のマッシュポテトがしかれていて、なめらかな舌触りに。

また、その向き合い方にも個性が表れる。

中華はとっても優しい味わいであったかいし、
イタリアンはガツンと食材の旨味を堪能させてくれる。
そしてフレンチはとても巧妙に、味のマリアージュで新たな世界を提案する。

こうして丸ごと一頭、お千代さんを頂いたわけだ。

生産者さん、シェフ、そして何よりお千代さん!
みんなが命を捧げてくださっている。
それを美味しく頂けるのもまた、ありがたい。
(ホントは塩分を控えなくてはいけないのだが。。。)

たった一度の食事で、すべてに感謝できた一日。

ごちそうさまでした。

2014年10月16日木曜日

おじさんおばさん

温泉でも入って英気を養おうと、四日市のアクアイグニスへ向かいました。

おいしい食事に、念願のフォルテシモアッシュの辻口さんのケーキ『セラヴィ』。
お腹もココロも満たされて、いざ入浴!

まるで美術館のようなエントランスに目を奪われつつ、
脱衣所へ向かうのれんをくぐろうとした、その時でした。

後ろから仲居さんに呼び止められました。

「女湯でしたら、こちらですよ」

振り返っても仲居さんは親切心満載の笑顔。

「あ、ぼくオトコです。。。」

まぁ、女湯入っていいなら、入っちゃいますけど?

女性に間違えられたのはこれで2度目だ。

妻とあるお宅へ訪問した所、『お母さんですか』と尋ねられた。
複雑〜。

まずお母さんほど妻と年離れてないし、
そもそも男だし。

なにひとつ合ってませんよ?

そういえば、レジのおばさんに声かけた瞬間、
女性だと思ってたらしく、驚かれた事もあった。

ぜんぜん男の格好してるし、おねぇ言葉も使ってませんよ?

なんなんでしょうね。
髪型?
まあ、中年のおばさんのショートヘアぐらいの長さですが。

体型?
まあ、入院中に痩せて、痩せ型の女性くらいの体重で華奢ですが。

猫背?
まあ、杖ついて歩いてるんで、中高年みたいな歩き方してますが。

顔立ち?
まあ、色白いし優しい顔立ちと言われますが。

どうも、私がおばさんみたいなおじさんです。


2014年9月24日水曜日

曲がり角の先に


4月19日の朝、急に呼吸が苦しくなって緊急入院。
原因は急性の心不全。
翌日の深夜になって容態が急変した。

そこから約一ヶ月半をICU(集中治療室)で過ごし、
7月末にようやく退院。

ICUに入った事も、そこから2週間ほどの記憶もまったくない。
どうやら三途の川の手前まで行き、呼び戻されたようだ。

その間の家族や友人の気持ちは、どれほど苦しかったか。
それを知る事ができたのも、今こうして生きているからだ。

たとえ良くなっても、車いすや呼吸器をつけての生活かと、
嘆いた日もあったけれど、気管切開と右足の麻痺だけで
なんとか歩いて退院できたのは、奇跡的です。

これまでずっと、いつ死んでもいいと覚悟を決めて生きてきた。
けれどもそれは間違いだった事に気づいた。

ぼくがしなければいけないのは、それでも生きていくという覚悟だった。

もしも家族や友人、あるいは同じ心疾患で苦しむ子どもたちに
ポジティブな影響を与えられるなら、
それでも生き抜いてみせることだと思う。

入院中の唯一の楽しみは、朝の連続テレビ小説「花子とアン」だった。
赤毛のアンは物語の中で、こう言った。

「曲がり角を曲がった先に、なにがあるのかはわからないの。
でもきっと一番良いものにちがいないと思うの」

ぼくもまた、何度めかの曲がり角に来たようだ。
みんなに助けられた命に感謝して、歩んでいこう。
自分の生命力を信じて。

2014年2月11日火曜日

おむすびの真ん中にあるもの


「おむすびは母の味だとは、絶対にいわない」

料理研究家の小林カツ代さんが、学校で授業をされる時に心がけていた事だそうです。
NHKの追悼番組の中で、過去のインタビューで語っていました。

お母さんがいない子もいるかも知れないし、もっと辛いのは、居るのに居てくれない。

でも、おむすびは愛情の形であることは間違いない。
だから優しさを伝えるために、おむすびの授業をする。

友達でも好きな人でもいい。誰かのために握る事を伝えたい。
手で握ることで気が入るんですよ。
だからラップでキュッなんてとんでもない。

手塩にかけるというけれど、手に塩をつけて握るのはなぜかとカツ代さんは考えた。

塩ご飯で握るとずっと同じ味で、2個3個と食べると飽きてしまう。
まわりだけ付いていると、塩味が薄くなった時に中からむにゅっと具が出てくる。
だから、おむすびを考えた人ってすごいなぁと思うの。

そうおっしゃっていました。

スミマセン、おむすびラップで握ってました。

そんなボクのような人のために、最後にいいアイデアを授けてくれた。

お椀にご飯をよそって、まんなかにくぼみを作って具を入れる。
それから手に水と塩を塗って握れば、そんなに熱くないでしょ。

さて、中にはなにを込めようかな。


カツ代さんは亡くなっても、レシピは残る。
ご冥福をお祈りします。